皆様、こんにちは。
本日、ご紹介するのは
アブラツノザメです。
一見して「本当にコレは食べられるの?」と思う方も居るのではないでしょうか。
三角形の背ビレにウロコのない流線型の体はいわゆるサメ型です。
「角鮫:ツノザメ」という種の中で、脂のあるサメなので「アブラツノザメ」という名前が付いています。
人がサメに襲われたというニュースが毎年のように流れているため、サメは獰猛で危険な動物だという印象があると思います。
そうしたイメージは映画などの創作物で助長されたものであり、サメは基本的に人間を獲物として認識していないようです。
※世界に500種類ほど存在するサメの中で、人間に危害を加える可能性があるのは1割ほどです。それらも積極的に人間を襲おうとしたのケースは少なく、大半はアザラシと人間を誤認しての攻撃だとされます。
実際にはサメ肉はカマボコなど練り製品の形で一般に流通してきました。
タイトル画像のアブラツノザメやネズミザメ(モウカザメ)は、特に味が良いサメということで市場にも流通しています。
「サメの肉は臭みがあってまずい」と言われますが、これは死後に時間が経つと肉に蓄えられていた尿素を微生物が分解してアンモニアが発生するからです。
逆にこのアンモニアが肉を腐敗から遠ざけ、長期保存を可能としている面は見逃せません。
※中国地方や関東地方の内陸部では現在でもサメの肉を食べる生活習慣が残っています。冷蔵技術の未発達であった時代に、サメは貴重な海洋性の動物タンパクを山間部にもたらしていたからです。これも長期保存が可能なサメ肉ならではのことですね。
アブラツノザメは水温の低い海を好み、津軽海峡の周辺が一大産地となっています。
縄文時代の頃から地元では食べられていたという、歴史のある食べ物です。
サメ肉を食べたことのない人でも、サメのひれ(フカヒレ)は高級食材として聞いたことはあるでしょう。
またサメの肝油は滋養に富んでおり、戦後の時期には肝油ドロップとして人々を栄養不足から救いました。
現在でもサプリメントなどにサメの肝油は幅広く使われています。
またこのサメの卵はウナギの養殖に深く関係しています。
未解明の部分が多いウナギの幼魚ですが、様々なエサを与えて試したところ、唯一サメの卵を食べることが判明しました。
これはウナギの完全養殖に向けて大きな前進ではありますが、今度はサメの資源保護が課題となっています。
※サメは一度に産卵する数が少なく、成長にも時間がかかるので生息数の回復が遅い。
アブラツノザメの旬は特に脂が多い冬です。
上述のように美味しくないという俗説があるサメ肉ですが、
鮮度の良いものはクセのない柔らかな食感で、味も一般的な食用魚と遜色がありません。
身の臭みについては冷蔵技術の発達していなかった頃の話であって、現在では臭みが発生しない下処理方法なども研究されています。
少し時間の経ったものについては、伝統的に生姜などで味付けして臭みを取って食べられます。
美味しいアブラツノザメを、是非ご賞味ください。